タイヤの履き替えが面倒でオールシーズンタイヤを検討しているけれど、購入前に知っておきたいポイントはありませんか?

  • オールシーズンタイヤは凍結に強いのか
  • 滑るからやめとけという噂は本当なのか
  • 北海道や東北のような降雪地域での氷上性能は?
  • 高速道路でのチェーン規制への対応は?

メーカーのカタログを見るといいことばかり書いてありますが、実際にブラックアイスバーンのような危険な路面で止まれるのかどうかは、命に関わる重要な問題です。

自分もタイヤ選びにはかなり悩みましたが、調べていくうちに雪と氷ではタイヤに求められる性能が全く違うことがわかってきました。

本記事では、オールシーズンタイヤの購入を考えている人へ向けて、オールシーズンタイヤは凍結路に強いのか、表情性能やスタッドレスタイヤとの違いを紹介します。

オールシーズンタイヤの雪と氷に対する物理的なアプローチの違い

オールシーズンタイヤの性能を理解するには、まず「雪」と「氷」でタイヤがどのようにグリップしているかを知る必要があります。

実はこの2つ、タイヤにとっては全く別の攻略法が必要なステージなんですよね。

わかりやすく比較表にまとめてみました。

※スライドできます
項目雪道(Snow)凍結路(Ice)
グリップの仕組み雪を踏み固めて蹴り出す
(雪柱剪断力)
氷の表面にゴムが密着する
(凝着摩擦)
重要な要素タイヤの「溝の形」と深さタイヤの「ゴムの柔らかさ」
オールシーズンの対応力得意(V字溝が機能する)苦手(ゴムが硬くて弾かれる)

雪道走行を可能にする雪柱剪断力とは

オールシーズンタイヤが得意とする「雪道」についてです。

ふかふかの新雪や圧雪路を走れるのは、主に「雪柱剪断力(せっちゅうせんだんりょく)」という力が働いているからです。

これは簡単に言うと、タイヤの溝に雪をギュッと踏み固めて「雪の柱」を作り、それを蹴り出す力のこと。

オールシーズンタイヤの独特なV字型の溝は、この雪柱を効率よく作るために設計されています。

ソウタ

雪がある程度積もっている道なら、意外なほどグイグイ進んでくれます。

凍結路面でのグリップに必要なゴムの柔軟性

一方で、カチコチに凍った「凍結路面(アイスバーン)」は全く事情が異なります。氷の上には踏み固める雪がないので、先ほどの雪柱剪断力は使えません。

氷の上で滑らないために必要なのは、以下の2つの力です。

  • 凝着摩擦
    タイヤのゴムが氷の表面にピタッと密着する力
  • ひっかき効果
    ゴムのエッジで氷を掴む力

ここで重要になるのがゴムの「柔らかさ」です。

氷の表面は顕微鏡で見るとデコボコしているので、ゴムが柔らかければそのデコボコに入り込んでグリップ力を生み出せます。

氷の上で止まるためには、溝の形よりも「ゴムがいかに柔らかく氷に密着できるか」が勝負の分かれ目になります。

スタッドレスタイヤとの構造的な違いを解説

では、スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤは何が違うのでしょうか。最大の決定的な違いは、やはり「ゴムの硬さ」です。

  • スタッドレスタイヤ
    極寒の氷の上でもカチカチにならないよう、非常に柔らかい特殊なゴムを使用。
  • オールシーズンタイヤ
    夏のアスファルトも走るため、耐久性を考えてゴムを硬めに設計

もしスタッドレスと同じ柔らかいゴムで夏の熱い路面を走ったら、グニャグニャして危険ですし、あっという間にすり減ってしまいます。

そのため、オールシーズンタイヤは夏の使用に耐えられるよう、どうしてもゴムを硬めに作る必要があります。

ソウタ

「夏も走れる硬さ」と「氷に密着する柔らかさ」は、物理的に両立が非常に難しいんです。

オールシーズンタイヤの氷上性能は?凍結に強いか検証

構造的な違いがわかったところで、実際のところ「凍結に強い」と言えるレベルなのか、データや路面状況ごとのリスクを見ていきましょう。

凍結路面での制動距離データの比較結果

JAFや自動車メディアが行っているテストデータを見ると、現実はかなりシビアです。

例えば、時速40kmから氷の上でブレーキをかけて完全に止まるまでの距離を比較すると、オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤに比べて、かなり制動距離が伸びる傾向にあります。

タイヤの種類氷上制動距離のイメージ危険度
スタッドレスギュッと止まる
(基準)
安全圏
オールシーズンズルズルと滑る
(+10m以上伸びることも)
要注意
サマータイヤ全く止まらない論外

路面状況にもよりますが、スタッドレスタイヤなら止まれる距離でも、オールシーズンタイヤだと車1台分以上オーバーランしてしまうことも珍しくありません。

ソウタ

この「あと数メートル」が、交差点で前の車に追突するかどうかの運命を分けます。

スノーフレークマークの誤解と本当の意味

タイヤのサイドウォールにある「スリーピーク・マウンテン・スノーフレークマーク」。

これがあると「冬道も安心!」と思ってしまいがちですが、ここには大きな落とし穴があります。

このマークの意味を正しく理解しておきましょう。

  • 証明するもの
    厳しい寒冷地での「雪上性能(雪道でのブレーキ性能)」
  • 証明しないもの
    「氷上性能(凍結路面での性能)」

つまり、「雪道は走れるよ」という証明であって、「ツルツルの氷でも止まれるよ」という証明ではありません。

この違いを正しく理解しておかないと、いざという時にヒヤッとする場面に遭遇してしまいます。

アイスバーンで滑る物理的メカニズム

なぜオールシーズンタイヤは氷で滑るのでしょうか。先ほど触れたゴムの硬さに加えて、「排水性能」の問題もあります。

氷の上で滑る本当の原因は、氷そのものではなく、氷とタイヤの間にできる「水」です。

スタッドレスタイヤはこのミクロな水を吸い取ったり除去したりする技術が詰め込まれていますが、オールシーズンタイヤにはそこまでの吸水・除水機能が備わっていないことが多いです。

そのため、氷の上の水膜に乗っかってしまい、まるで水の上を滑るようにコントロールを失ってしまうのです。

ブラックアイスバーンでの危険性を分析

ドライバーを恐怖に陥れるのが「ブラックアイスバーン」です。一見するとただ濡れている黒いアスファルトに見えるのに、表面が薄く凍っている状態です。

ブラックアイスバーンは見た目が普通の道に見えるため、ドライバーも油断して通常の速度で進入しがちです。

しかし、そこが凍っていた場合、氷に対応しきれないオールシーズンタイヤは一瞬でグリップを失います。

スタッドレスならギリギリ耐えられる場面でも、オールシーズンだとステアリング操作が全く効かなくなるリスクが高いため、

  • 早朝・深夜の冷え込んだ時間帯
  • 橋の上(風が通り抜けて凍りやすい)
  • トンネルの出入り口
  • 日陰になっているカーブ

以上の場所では最大限の警戒が必要です。

オールシーズンタイヤで後悔しないために知るべきリスクとユーザーの声

実際にオールシーズンタイヤを履いている人たちはどう感じているのでしょうか。

「便利!」という声がある一方で、「後悔した」「やめとけ」という声があるのも事実です。

買って後悔する人の共通点と理由

後悔している人の多くは、「スタッドレスタイヤと同じ感覚で乗ってしまった」というパターンです。

「オールシーズンって名前だし、冬も万能なんでしょ?」と期待して購入し、最初の凍結路面でヒヤリとして「これじゃ怖くて乗れない」となってしまうケースですね。

また、ロードノイズが思ったより大きかったり、意外と早くタイヤが減ってしまったりと、性能とコストのバランスで期待外れだったと感じる人もいます。

やめとけと言われる地域や使用条件

正直に言うと、以下の条件に当てはまる場合は、自分も「オールシーズンはやめてスタッドレスにした方がいい」とアドバイスします。

  • 自宅周辺に急な坂道が多い(特に上り坂)
  • 日陰が多く、路面が凍結しやすい場所に住んでいる
  • 絶対に車を使わなければならない日が決まっている(仕事など)
  • 運転にあまり自信がない

特に、凍結路面に出くわす確率が高い環境では、オールシーズンタイヤのメリットよりもリスクの方が大きくなってしまいます。

坂道発進できないトラブルの実態

オールシーズンタイヤの弱点が露骨に出るのが「凍結した坂道」です。

平坦な雪道なら走れても、凍結した上り坂で一度止まってしまうと、再発進しようとしてもタイヤが空転して登れないというトラブルが報告されています。

特にFR(後輪駆動)車や、重量のあるミニバンなどは要注意です。スタッドレスなら登れる坂でも、オールシーズンだと立ち往生してしまう可能性があります。

北海道での使用が推奨されない理由

検索でもよく出てきますが、北海道や東北地方での使用は基本的に推奨されません。

これらの地域では、路面が完全に凍結する期間が長く、交差点は磨かれてツルツルの「ミラーバーン」状態になります。

このような過酷な環境では、スタッドレスタイヤでさえ滑ることがあるのに、氷上性能が劣るオールシーズンタイヤで挑むのは無謀と言わざるを得ません。

ソウタ

命を守るためにも、降雪・凍結が日常的な地域では迷わずスタッドレスを選びましょう。

実際に起きたスリップ事故の事例を紹介

ニュースなどで報じられることもありますが、冬の初めにオールシーズンタイヤや夏タイヤ装着車が、橋の上やトンネルの出入り口でスリップして事故を起こすケースがあります。

共通しているのは「路面状況の変化に対応できなかった」という点です。

ドライ路面から急に凍結路面に入った瞬間、オールシーズンタイヤの限界を超えてしまい、スピンや追突につながっています。

自分は大丈夫と思わず、こうした事例を教訓にして「凍結路面かもしれない」という予測運転を心がける必要があります。

オールシーズンタイヤの主要メーカーの製品比較と賢い選び方

それでも、非降雪地域に住んでいる人にとってはオールシーズンタイヤは魅力的な選択肢です。

ここでは、選ぶならどれが良いのか、メーカーごとの特徴を見ていきましょう。

ミシュランなど人気メーカーの性能比較

現在、市場で人気のある主要なオールシーズンタイヤの特徴を簡単に比較してみます。

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メーカー・製品名特徴・強みおすすめユーザー
ミシュラン
クロスクライメート2
雪も走れる夏タイヤ。
ドライ性能と静粛性が抜群。
走りを楽しみたい人
高速利用が多い人
グッドイヤー
ベクター 4シーズンズ
日本の雨に強い。
バランスの良いパイオニア。
ウェット性能重視の人
コスパを求める人
ダンロップ
ALL SEASON MAXX AS1
雪道性能とライフ性能の両立。
急な雪への備えに。
雪はたまにしか降らない
都市部のユーザー

ミシュランは「夏タイヤとしての性能」を落とさずに雪道対応させた点が凄いです。

一方、グッドイヤーは日本の濡れた路面にマッチしています。

最近はコンチネンタルやピレリなども高性能なモデルを出しており、オールシーズンタイヤの選択肢は徐々に増えています。

ダンロップ等の凍結路に対する公式見解

ここで注目したいのが、メーカーの誠実な姿勢です。

例えば、ダンロップの公式サイトでは、オールシーズンタイヤの走行可能路面について非常に明確な見解を示しています。

「氷上路面ではスタッドレスタイヤを推奨いたします」

「過酷な積雪・凍結路面では走行しないでください」

(出典:ダンロップ「オールシーズンタイヤの得意・不得意」

メーカー自身が「凍結路面は苦手です」と正直に認めているわけです。これは性能が低いということではなく、物理的な限界をユーザーに伝えている証拠です。

ソウタ

この警告を重く受け止め、凍結路面での走行は避けるべきでしょう。

寿命や燃費性能で見る経済的な評価

「オールシーズンタイヤは経済的」と言われますが、これは年間走行距離によります。

  • 1年中履きっぱなし
    当然、走行距離は伸びます
  • 夏の高温
    夏場の熱い路面ではゴムの摩耗が進みやすいです

年間1万km以上走るようなヘビーユーザーだと、2〜3年で寿命が来て買い替えになることもあります。

スタッドレスと2セット持ちで5〜6年持たせるのと、トータルコストが変わらない、あるいは高くなる場合もありますので、自分の走行距離と相談が必要です。

自分におすすめのタイヤを見極める方法

結局、自分に合っているかどうかは「冬に車に乗らない選択ができるか」にかかっています。

  • 雪が積もった日や路面凍結しそうな朝は、車を置いて電車やバスで行ける人
  • 住んでいる場所が関東や東海、関西などの平野部である人
  • タイヤの保管場所に困っているマンション住まいの人

こういった方には、オールシーズンタイヤは最強のパートナーになります。

高速道路のチェーン規制時の注意点

最後に、高速道路の規制についてです。

スノーフレークマークが付いているオールシーズンタイヤなら、「冬用タイヤ規制」が出ている高速道路でもそのまま走行可能です。

ただし、大雪特別警報などで発令される「チェーン規制(緊急チェーン規制)」の区間では、どんなに高性能なスタッドレスやオールシーズンタイヤを履いていても、チェーンを装着しないと通行できません。

オールシーズンタイヤだからといってチェーンが不要なわけではありません。万が一のスタックや規制に備えて、必ずチェーンを車載しておきましょう。

まとめ|オールシーズンタイヤは凍結路面には強くない

結論として「オールシーズンタイヤは凍結路面(アイスバーン)には強くない」と断言できます。

構造上、どうしても氷の上ではスタッドレスタイヤのようなグリップ力を発揮することはできません。

制動距離は伸び、コーナリング限界は低く、一度滑り出せば制御は困難です。

しかし、それはオールシーズンタイヤがダメなタイヤという意味ではありません。

  • 突然の雪にはしっかり対応できる
  • 面倒なタイヤ交換や保管の手間から解放される
  • ドライ・ウェット路面では快適に走れる

このメリットは計り知れません。

「氷の上では夏タイヤとあまり変わらないから、無理はしない」という正しい認識を持ってスピードを控えめにし、車間距離を十分にとる運転ができるなら、これほど便利なタイヤはないと思います。

自分のライフスタイルと住んでいる地域の環境をよく考えて、後悔のないタイヤ選びをしてくださいね。