カー用品店やネットショップでも見かけることが増えた「オールシーズンタイヤ」ですが、実際のところ、普通の「サマータイヤ」と何が違うのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

サマータイヤとオールシーズンタイヤの違いについて、どっちがいいのか、雪道での安全性や燃費性能、寿命はどうなのかといった情報を集めれば集めるほど、選択の複雑さに迷ってしまうこともありますよね。

「本当に雪道を走れるの?」と半信半疑でしたが、詳しく調べて実際に比較してみると、それぞれのタイヤには明確な得意分野と、決して無視できない苦手分野があることがわかりました。

この記事では、皆さんが後悔しないタイヤ選びができるよう、両者の違いや特徴をわかりやすく解説していきます。

サマータイヤとオールシーズンタイヤの違い|基礎知識

サマータイヤ(ノーマルタイヤ)とオールシーズンタイヤが、そもそも「モノ」としてどう違うのかを見ていきましょう。

黒くて丸いゴムの塊に見えますが、その中身は全く別の思想で作られているんです。

トレッドパターンなど外見の見分け方

タイヤの顔とも言える「トレッドパターン(溝の模様)」を見ると、その違いは一目瞭然です。

サマータイヤの特徴オールシーズンタイヤの特徴
・太い縦溝がメイン
・全体的にすっきりしたデザイン
・接地面積が広く確保されている
・中心から広がるV字型の溝
・ブロック表面に細かい切れ込み(サイプ)
・複雑でゴツゴツした見た目

一般的なサマータイヤは、雨水を効率よく排出するための太い縦溝がメインで、全体的にすっきりとしたデザインをしています。

これは、アスファルトの上でしっかりと接地面積を稼ぎ、静かで安定した走りをするための形状です。

一方、オールシーズンタイヤは、かなり特徴的な見た目をしています。

多くのモデルで採用されているのが、中心から外側に向かってV字型に刻まれた溝や、細かい切れ込みです。

この独特な「V字パターン」は高い排水性と排雪性を両立するためのもので、さらにブロックの表面には「サイプ」と呼ばれる細かい切り込みが無数に入っています。

ソウタ

スタッドレスタイヤにも見られるこのサイプが、雪を噛むエッジ効果を生み出しています。

コンパウンド特性と基本性能の差

見た目以上に重要なのが、ゴムの素材(コンパウンド)の違いです。ここには「温度」に対する科学的なアプローチの差があります。

ゴムの硬さと温度の関係

タイヤのゴムは、温度が下がるとプラスチックのようにカチカチに硬くなってしまいます。これを「ガラス転移」と呼ぶそうです。

サマータイヤは、基本的に気温7℃以上での使用を前提に作られています。

そのため、夏場の高温でもフニャフニャにならないよう硬めのゴムが使われていますが、冬になって7℃を下回るとゴムが硬化し始め、路面に食いつく力が急激に落ちてしまいます。

これに対しオールシーズンタイヤは、特殊なポリマーやシリカを配合することで、夏の暑さにも耐えつつ、氷点下に近い低温でもしなやかさを保てるように設計されています。

この「広範囲な温度領域でゴムの性能を発揮できる」という点が、技術的な最大の違いと言えます。

夏冬タイヤ併用との賢い使い分け

日本では長らく「夏はサマータイヤ、冬はスタッドレスタイヤ」という2セット運用が常識でした。しかし、オールシーズンタイヤの登場で、この常識が変わりつつあります。

サマータイヤとスタッドレスを履き替えるスタイルは、それぞれの季節に「100点満点」の性能を発揮できるのがメリットです。

しかし、保管場所の問題や交換の手間がつきまといます。

対してオールシーズンタイヤは、極端な猛暑や極寒を除いて、年間を通じて「80点以上」の性能をキープし続ける「ジェネラリスト」です。

履き替えの手間をなくし、「突然の雪への保険」をかけながら一年中走り続けられるという新しい選択肢となっています。

サマータイヤとオールシーズンタイヤ|路面状況別の走行性能と限界

では、実際に走ってみるとどうなのでしょうか?ここが皆さんが一番気になるところだと思います。

「どこまで走れて、どこからが危険なのか」を、シチュエーション別に深掘りします。

乾いた路面や雨の日のグリップ力

以前のオールシーズンタイヤは「夏タイヤよりうるさくて、グリップも弱い」なんて言われることもありましたが、最新モデルは本当に進化しています。

ドライ(乾燥路面)やウェット(雨天)においては、スタンダードなサマータイヤと比較しても遜色のない性能を持っています。

特に雨の日の性能を示す「ウェットグリップ性能」で、最高ランクに近い評価(ラベリング「a」や「b」)を獲得しているオールシーズンタイヤも多いんです。

もちろん、スポーツタイヤのようなガチガチの剛性感はありませんが、街乗りや高速道路を法定速度で走る分には、サマータイヤとの違いを体感することはほとんどないレベルに仕上がっています。

雪道での走行可否と制動距離

「サマータイヤとオールシーズンタイヤの違い」が決定的に現れるのが雪道です。

サマータイヤで雪道を走るのは、はっきり言って自殺行為です。

JAFなどのテストデータを見てもわかりますが、ゴムが硬化して溝も目詰まりするため、ブレーキを踏んでも止まらず、カーブでは曲がれません。

オールシーズンタイヤなら、

  • 圧雪路(踏み固められた雪)
  • シャーベット状の雪道

でも、しっかりとグリップします。

細かいサイプが雪を掴んでくれるので、普通に発進して、普通に止まることができます。

ソウタ

「年に数回雪が積もる」程度の地域なら、これで十分対応できると感じます。

凍結路面や氷の上での危険性

ここが今回の記事で一番伝えたい注意点です。オールシーズンタイヤは「雪」には強いですが、「氷」には弱いです。

【重要】凍結路面(アイスバーン)は苦手です

オールシーズンタイヤは、スタッドレスタイヤのように氷の表面の水膜を除去したり、氷の微細な凹凸に密着したりするほどの柔らかさは持っていません。

  • テカテカに凍ったミラーバーンや
  • 一見濡れているだけに見えるブラックアイスバーンでは、

サマータイヤよりはマシとはいえ、スタッドレスタイヤに比べて制動距離が大幅に伸びます。

北海道や東北、あるいは山間部など、「路面凍結が日常茶飯事」という地域にお住まいの方には、正直なところオールシーズンタイヤ一本での運用はおすすめできません。

ソウタ

ここは命に関わる部分なので、慎重に判断してください。

走行音やロードノイズはうるさいか

独特のV字パターンや細かい溝があるため、「コーー」というパターンノイズがサマータイヤより大きくなる傾向にはあります。

ただ、これも「昔に比べれば」という話で、最近のプレミアムなオールシーズンタイヤはかなり静かになっています。

車内で音楽を聴いていれば気にならないレベルか、あるいはスタッドレスタイヤで乾いた路面を走るよりはずっと静かだと自分は感じます。

高速道路の冬用タイヤ規制への対応

冬の高速道路で出される「冬用タイヤ規制(滑り止め装置装着規制)」。

サマータイヤだと検問で降ろされてしまいますが、オールシーズンタイヤはどうでしょうか?

答えは「通行可能」です。ただし条件があります。

タイヤの側面に「スノーフレークマーク(山の中に雪の結晶が描かれたマーク)」が刻印されている必要があります。

現在日本で販売されている主要なオールシーズンタイヤにはこのマークが付いていますが、購入時には必ず確認するようにしましょう。

これがあれば、わざわざチェーンを巻くことなく規制区間を通過できるので、冬のドライブの利便性は格段に上がります。

サマータイヤとオールシーズンタイヤ|寿命や価格など経済性の検証

性能の次は、お財布事情、つまり「コスト」について見ていきましょう。タイヤは決して安い買い物ではないので、長期的な視点での比較が大切です。

走行距離による寿命と交換サイクル

「オールシーズンタイヤは寿命が短い」という噂を聞いたことがあるかもしれません。これには一理あります。

  • サマータイヤよりゴムが少し柔らかい
  • 夏場の熱いアスファルトで摩耗しやすい

夏場の熱いアスファルトの上で、スタッドレスの要素を含んだ少し柔らかいゴムで走るわけですから、純粋なサマータイヤに比べると摩耗はやや早い傾向にあります。

一般的には30,000km〜50,000kmくらいが目安と言われています。

ただ、ここで考えたいのがゴムの「経年劣化」です。

タイヤは走らなくても、3〜4年経つとゴムが硬くなって性能が落ちます。

年間走行距離が少ない方の場合、サマータイヤとスタッドレスを2セット持っても、溝が残ったままゴムが劣化して廃棄になるケースが非常に多いんです。

それなら、オールシーズンタイヤ1セットを3〜4年で使い切って新品に交換するほうが、常に新鮮なゴムで走れて、結果的に無駄がないとも言えます。

転がり抵抗と燃費性能の比較

燃費に関しては、最近のモデルならサマータイヤとほとんど変わりません。

転がり抵抗性能で「A」評価を取っているオールシーズンタイヤも増えてきています。

「スタッドレスを履きっぱなしにすると燃費が悪くなる」とはよく言われますが、最新のオールシーズンタイヤなら、燃費の悪化を気にして導入をためらう必要はないでしょう。

タイヤ交換費用と保管コストの節約

ここがオールシーズンタイヤ最大のメリットです。なんといっても、春と冬のタイヤ交換作業が不要になります。

年間維持費の節約シミュレーション(17インチの場合)

  • 交換工賃:約6,600円(年2回)
  • 5年間合計:約33,000円

これだけの金銭的コストが浮くだけでなく、以下の「見えないコスト」も削減できます。

  • 交換のためにカー用品店やガソリンスタンドに行く時間
  • 繁忙期の数時間待ちのストレス
  • 重いタイヤをベランダや物置から車へ運ぶ重労働
  • マンション等の場合のタイヤ保管料(レンタル倉庫代)
ソウタ

保管場所がないマンション住まいの方にとって、このメリットは計り知れないですよね。

知っておくべき価格面でのデメリット

一方で、タイヤ本体の価格を見ると、同クラスのサマータイヤよりは若干高めに設定されていることが多いです。

また、流通量がサマータイヤほど多くないため、激安店での特売にかかりにくいという側面もあります。

ただ、スタッドレスタイヤとホイールを別途購入する初期費用や、毎年の工賃を合わせれば、トータルコスト(TCO)ではオールシーズンタイヤに軍配が上がるケースが多いです。

オールシーズンタイヤの規制対応と最適な選び方

最後に、法的な規制への対応と、結局「誰にどのタイヤがおすすめなのか」をまとめます。

チェーン規制発令時の走行ルール

ここで一つ、大きな誤解を解いておく必要があります。「チェーン規制」についてです。

2018年から運用が厳格化された、大雪特別警報レベルの際に出される特定の区間での「チェーン規制」。

この規制が出た場合、スタッドレスタイヤだろうがオールシーズンタイヤだろうが、タイヤチェーンを装着しないと通行できません。

(出典:国土交通省『チェーン規制Q&A』

「オールシーズンタイヤだからチェーンは要らない」というのは間違いです。

万が一の豪雪に備えて、布製チェーンなどの簡易的なものでも良いので車に積んでおくのが、真の安全対策です。

ライフスタイル別の交換時期と推奨層

これまでの情報を踏まえて、それぞれのタイヤがおすすめな人を整理してみました。

※スライドできます
おすすめのユーザー層推奨タイヤ
非降雪地域(関東・東海・大阪など)在住で、年に数回の雪に備えたい人オールシーズンタイヤ
マンション住まいでタイヤの保管場所がない人オールシーズンタイヤ
年間走行距離が10,000km以下で、交換の手間を減らしたい人オールシーズンタイヤ
降雪地域・寒冷地に住んでいて、路面凍結が日常的な人サマー + スタッドレス
スポーツ走行を楽しみたい、または年間2万km以上走る人サマー + スタッドレス

評判から見るメーカーの選び方

オールシーズンタイヤを選ぶ際は、実績のあるメーカーを選ぶのが無難です。

  • ミシュランの「クロスクライメート」シリーズ
  • グッドイヤーの「ベクター」シリーズ

などは、ユーザーからの評判も良く、ドライ性能と雪道性能のバランスが非常に高いレベルでまとまっています。

最近では国産メーカーも力を入れており、ヨコハマやダンロップからも高性能なオールシーズンタイヤが出ています。

ソウタ

自分の車種やサイズに合わせて選んでみてください。

まとめ|サマータイヤとオールシーズンタイヤの違い

サマータイヤは「特定の季節のスペシャリスト」、オールシーズンタイヤは「一年中頼れるジェネラリスト」です。

以前は「どっちつかず」なんて言われることもありましたが、技術の進化でその差は確実に埋まってきています。

  • 自分は凍結路面を走る可能性があるか?
  • タイヤ交換の手間とコストをどう考えるか?

この2点を軸に考えれば、きっとあなたにぴったりのタイヤが見つかるはずです。

この記事が、皆さんの安全で快適なカーライフの一助になれば嬉しいです。